まちなかの商業施設や駅周辺の通路などで、ふと緑を目にして思わず足を止めたような経験はありませんか。なんとなく心が安らぐ、ちょっとそばに寄ってみたくなる。そこには自然を愛する人間の本能的欲求を考慮して、建物という人工環境の中に自然とのつながりを与える要素を取り込む‘バイオフィリックデザイン’が施されているかもしれません。
生産性や創造性の向上につながるという研究結果(*)などから、オフィスや様々な公共施設の空間におけるバイオフィリックデザインへの期待が高まっています。
(*)ヒューマン・スペース:世界中の職場におけるバイオフィリックデザインの効果, 2015
今回のLISN No.195では、 図書館の読書空間への導入にも期待が膨らむバイオフィリックデザインについて特集しています。
特集は、「今こそ、バイオフィリックデザイン」です。自然を愛し自然とつながりたいという、人の本能的欲求を満たすアプローチで空間をデザインするバイオフィリックデザインについて、主に植物の効用の観点から、居住環境学、建築環境工学をご専門とされる源城氏より、また光・窓、窓からの眺望に関連して、建築光環境の設計と評価に関するご研究などをされる古賀氏より、そして建築環境、建築音響学、心理音響学などがご専門の辻村氏に音の観点からご執筆いただいています。
設備事例紹介は、東日本大震災及び原発事故発生から11年振りに2022年6月に再開した浪江町図書館です。再開以前の浪江町図書館から震災時の様子、浪江町仮設図書館も併せてご紹介いただいています。
専修大学野口氏の連載「『誰一人取り残さない』図書館を目指して」、最終回 第4回は 「外国にルーツのある人へのサービスを考える」 と題して、多文化サービスとは何か、サービスの現状と課題、そして連載4回を通しての野口氏からのメッセージをお届けします。
資料紹介は、コミュニティメディアとコミュニティアーカイブが地域再生に果たす役割について全国各地の先進的な事例が紹介された「地域でつくる・地域をつくる メディアとアーカイブ」と、全国66の図書館をめぐる旅エッセイ集「図書館ウォーカー ―旅のついでに図書館へ―」です。
製品紹介では、図書館空間に自然の環境を提案する「Reading Nature Garden」、そして自分で本の修理をするための「本のおどうぐばこ」に続く第二弾、のりを使った補修道具セット「本のおどうぐばこ のり」をご紹介しています。
LISN195号 (2023年3月)
特集「今こそ、バイオフィリックデザイン」
源城 かほり(長崎大学工学研究科 教授)
「バイオフィリックデザインがワーカーの健康に及ぼす効果」
古賀 靖子(九州大学大学院人間環境学研究院 准教授)
「建物の窓がもたらす自然光と眺望の価値」
辻村 壮平(茨城大学大学院理工学研究科都市システム工学領域 准教授)
「人の心理から考える音環境のデザイン―ワークプレイスにおけるバイオフィリックデザインに適した音環境の検討―」
設備事例
木村 正人 (浪江町教育委員会事務局生涯学習係主査・高知県被災地派遣職員)
「浪江町図書館―あの日から11年振りの再開―」
連載「誰一人取り残さない」図書館を目指して
野口 武悟(専修大学 文学部教授)
「第4回 外国にルーツのある人へのサービスを考える」
資料紹介
「地域でつくる・地域をつくる メディアとアーカイブ」
「図書館ウォーカー ―旅のついでに図書館へ―」
製品紹介
「Reading Nature Garden」
「本のおどうぐばこ のり」